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 荒走り、中取り、責め
2010年06月04日 (金) | 編集 |
勝手な思い込みで書くことは恥ずべき事。

何とも適当な説明がなされている某所にリンクなり、TBなりつけたいところだが、それは置いておいて、清酒の「荒走り」、「中取り(中垂(だ)れ、中汲み)」、「責め」の定義について、手持ちの中で比較的信頼性が高いと思われる資料の説明について整理しておく。どうも「中取り」は醪および酒袋の自重だけで滴る部分だけで、人為的に圧力をかけて出てきたものは「責め」という認識が一部に見受けられる。これらの表現は昔ながらの槽を用いての搾り方に固有の区分であろうし、自動圧搾機を用いた場合や袋吊りといった特殊な搾り方によって異なってくるだろう。それに蔵によって製品に当てている定義に差はあるかもしれんが、「荒走り」「中取り」「責め」の区分は一般認識としてこう捉えるのが本則だろうということである。

桜井芳人ら編『総合食料工業』(恒星社厚生閣、1970年)の「清酒」の「上槽」の項目より、

「5.5~9L入りの酒袋(木綿または化学繊維製)に分注して、槽(木、コンクリート、ステンレス製)の中に積み上げる。最初は加圧しなくても清酒は流出(脚注:この部分を荒走りという)するが、その後次第に圧力を高めながら、上部から全体を加圧していく(脚注:中だれという)。翌日、袋を積みなおして(槽なおし)圧力が均一にかかるようにしてから、140kg/c㎡程度の圧力でさらにしぼる(脚注:責めという)」(419ページ)



小泉武夫編『日本酒百味百題』(柴田書店、2000年)より、特に問題ない部分は省略しつつ、

「もろみを詰めた酒袋を槽に並べて積み重ねる。このとき、槽の垂れ口から最初に出てくる酒は、袋詰めの時に漏れたりしたもろみの粒子が含まれていて白く濁っているが、これが「荒走り」である。…積み終わって数時間ほどは、酒袋自体の重みできれいな酒が自然に垂れてくるが、…積み上げた酒袋が低くなってきたら…圧搾を始める。…翌日、酒袋を別の槽に積み替えて(槽直し)再び圧搾する。これを「責槽」といい、ここで出る酒を「責め」という。荒走りの後から責めの前まで出た酒は品質がよく、「中垂れ」とよんで区別する」(170~171ページ)


上原浩『いざ純米酒』(ダイヤモンド社、2002年)より、かなり専門的な解説がなされているが、

「圧力をかけずに酒が流出する間を水槽と言う。水槽の最初の部分を「荒走り」と呼び、…それ以降を「中垂れ」「中汲み」と呼び、ここからは入れ口のタンクに採る。…槽かけ後四時間から六時間経過した時点で、全体の約七割方の酒が得られる。この間に袋の内部では、醪中の大きい粒子が袋の目に溜まり、順次内側に小さい粒子が堆積して濾過槽が形成される。その後、加圧してさらに醪を搾るが、この場合に急に大きな圧力を加えると酒袋が破損すしたりするので、最初は最上部の袋の上に枕木などをのせて軽く圧を加え、その後に縁抜きと称して槽の前後一列分の袋を重ねて一平方センチあたり三十五キロの力で圧搾する」(154ページ)

「上槽の翌日になると流出が少なくなり、酒槽の隅のほうは搾り切れないので、袋直し(槽直し)と言って袋を積み替え、さらに一平方センチ当たり二〇〇キロ程度の強圧を加える。これを「責め」という」(155ページ)


といった具合で、文献ごとで圧力の数値に違いがあるとはいえ、総じると、酒袋を積みはじめて最初に滓がらみで出てくる部分が「荒走り」その後に滓を含まずに透明になって以降に緩やかに圧をかけて搾られた部分が「中取り(中垂れ、中汲み)」最後に酒袋を積み直して強く圧をかけて搾った部分が「責め」である。強調しておくと、厳密に言えば自重のみではなく緩やかに圧をかけて出てくる部分も「中取り」である。余談ながら、引用では省略しているが、「責め」は得られる清酒量の5%程度とのことである。

さて、一方で日本名門酒会の公式サイトでの解説などではどうも圧力をかけて出てきたのは「責め」であると捉えられてしまうような、特に「中取り」の説明が曖昧な解説になっている。蔵元がHPで用語解説をしている場合、この説明をそのまま持ってきてしまっているという傾向が多いように見受けられる。つまり、この説明による認識が大勢を占めているだろうと推察される。

また、清酒好きにはそこそこ普及しているであろう尾瀬あきら『知識ゼロからの日本酒入門』(幻冬舎、2001年)でもそのような記述になっているのはどうにも頂けない。引用しておくと、

「酒袋を槽に置いただけでも、酒は酒袋から染み出て勝手にしたたり落ちてくる。それが「荒走り」。炭酸ガスを含み、若く勢い旺盛だが、味は淡泊な酒だ。この次に、槽いっぱいに酒袋を積み、その重みだけで一昼夜かけてあふれてくる酒があるが、これが「中垂れ」の酒。「中汲み」や「中取り」ともいう。味・香りともに、その酒本来の味わいが楽しめる部分だ。さらに酒袋の位置を変え、槽の上に圧板をのせて圧力をかけ、粕ができるまで搾っていくのが「責め」の酒」(133ページ)


これは、取材された蔵のやり方がこうだった、という風に解釈もできるが、「中取り」の部分は上記の定義とは異なる記述となっているのは確かである。こういう認識が流布している一端か。後、個人的疑問として荒走りって淡泊な感じするかね?

資料収集は私の性分からくるものであるが、何かの事柄を説明しようとする場合、さらっと書くにしても一定の確実性を伴った情報を検証した上で依拠しておく必要はあるのは間違いない。うんちくたれたければそれなりの下積みが必要、そういうところで中身空っぽさの馬脚が現れるものである。

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コメント
この記事へのコメント
こねくろ様 初めまして。

自分も某氏の中取りの記述に関して、「ん?中取りだって加圧するだろ」って思っていました。

いつも自分は某氏がどんなボロを出すか楽しみに、マメにチェックしておりますが、さすがにこれはおかしいと思って、宮城県の「森乃菊川」さんと「森泉」さんの混同、山形県の「竹の露」さんの使用米に関する勘違いをしていた時は某氏のブログへコメントしましたが。

某氏は今も相変わらず加圧しないでも垂れ流し状態ですよね。
2010/06/05(土) 10:18:11 | URL | 酒ばか1号 #2PUI3szM[ 編集]
酒ばか1号さん、こちらこそはじめまして。

某氏については身近な方々の中でももはや呆れている状況ではあります。そういう見方をしている人は多いとは思いますが、相も変わらず意気揚々と適当な知識(大概は適当にネット上で拾っただけ、と推測してますが)と偏見まみれの記事をばらまいている様は裸の王様かと。

コメントしても(私は直接したことはないですが)徒労に終わるだけでしょうし、もはや私にとっては情報公害として批判対象ですね。
2010/06/06(日) 10:09:57 | URL | こねくろ #RuqWbrxY[ 編集]
あれま、こねくろさんのようなきちんとした酒のみの方(皮肉じゃないです)からお返事いただきとてもうれしいです。

今日はちょっと所用で酔っ払っている状況での書き込みですが、確かにあの、お○○への指摘は徒労で終わるんですよね。
でも誰かが指摘しないと誤った情報が独り歩きしかねないと思ってついつい指摘しちゃうんですよね。

味や香りのとらえ方は個人差があるので何とも言えませんが、「森乃菊川」さんと「森泉」さんの混同は未だに許せない…

つか、某氏の情報を本心から有益と思っている方がいるのが信じられないと言うか… (以下自粛…)

でもいまの世間(都会)で、はやりのお酒の銘柄を知るには役立つかな。(自分が呑んでみたいお酒はほとんど無いけど)

こねくろさんブログ汚してごめんなさい。

あ、こねくろさん、いつか「六根浄」さんに遊びに行って下さいねv-238
2010/06/06(日) 20:21:20 | URL | 酒ばか1号 #2PUI3szM[ 編集]
酒ばか1号さん

こちらこそ、このようなコメントを頂けたことをありがたく思っています(同じく皮肉ではないです)。

おっしゃっている事は非常によくわかります。私も、誰もが某氏を反面教師的観察対象にしていたらこんな記事を書きません。あそこで書いている情報を真に受けること、某氏に身近な業界の人間が苦言を告げない事にこそ腹立ちを隠せません。

たまたま2chの「なぜ関東圏の奴のオススメはワンパターンなの」というスレッドで某氏が触れられているのを見つけましたが、正にその典型かと。

えと、六根浄さんの方には「日本酒復権への第一歩」の頃から時折興味深くROMらせて頂いておりますよ。コメントを残すとなるとアレですが。。。
2010/06/06(日) 22:22:14 | URL | こねくろ #RuqWbrxY[ 編集]
「大倉」記事ですね。
改めて某氏の記事を確認しました。
さらに、「大倉」記事におけるコメントでのやりとりがまた馬鹿丸出しなのをみて笑いました。そもそも醸造酒と蒸留酒の場合では、根本的な違いがあるでしょうに。

私の場合、件の某ブログに対しては、傍観しつつ(=晒しつつ)時々(=暇なとき)コメントをしている立場ですが、最近はますます酷さに滑車がかかっているように見受けられます。好意的(?)なコメントをする一部の“信者”は誰も突っ込まないのでしょうが・・・。

そのうち、また某氏をネタに記事を書いてみようと思います。
これはこれで楽しい場合があるので(笑)。
2010/06/08(火) 18:00:32 | URL | 和 醸 良 酒 #tKPCyoPY[ 編集]
Re: 「大倉」記事ですね。
和醸良酒さん、どうもレスが遅くなって申し訳ありません。

まあ、アレは全く救いがたいですな。信者というか取り巻きも含めて。
放置するのは業界にとってもマイナスだと思いますが、アレの「対抗
トーナメント」の結果を宣伝文句に使っている酒屋を見かけたときは
暗澹たる気持ちになりました(´・ω・`)

まぁ、あの訪問数の多さは、穿った、あるいは愚行の観察対象としている
人がそれだけ多いものと推察はしておりますが、問題と思っているなら
意思表示はある程度はして欲しいなぁと。
2010/06/11(金) 00:38:35 | URL | こねくろ #RuqWbrxY[ 編集]
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