日々の晩酌を中心に、時々我が家の虎猫兄弟なブログ。
 スポンサーサイト
--年--月--日 (--) | 編集 |
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。


 「特定名称酒」が問題なのか
2009年02月18日 (水) | 編集 |
ちょうど『神の雫』がドラマでやってますな、原作は全然知らんがとりあえず見ております。ストーリーは単純に面白いなぁと思っとります。

ちょっと色々と確認したいことがあって、ここ最近に何度か大阪梅田の大型本屋の酒関連コーナーに立ち寄ることが多いが、他の立ち読み客を見てると十中八九ワイン関連の本に手を出している。それも、ソムリエ受験対策といった、どちらかといえば小難しい部類のものである。『神の雫』が放映中という影響もあるかもしれないが、これまでも同様の印象がある。なぜか、清酒関連の本を立ち読みしている方に遭遇したことがない。そういう印象のある一方で、清酒は小難しいという話をよく見聞する。とある超有名な経済学者先生の弁を又聞きした話によると、その先生は結構ワインは好き(とある自身の記念パーティーの出席者に自分のイラストラベルのオリジナルワインを配布するほど)なのだが「日本酒(清酒)はややこしくて僕はよくわからない」と仰っているらしい。

もう一つネタふり、とある焼酎メインの方のブログにて「清酒の今後を考える」というテーマの連続記事を拝見した。内容の細かな点については(中略、むしろ自主規制というべきか)なのだが、その中で「特定名称酒」について見直すべきだ、という内容があった。「特定名称酒について細かい基準を熟知している方はどの程度おいででしょうか?」と自らが熟知しているかのように投げかけている割には「清酒の製法品質表示基準」の2003年10月改正によって「米・米麹・水だけでつくられている清酒はすべて純米酒と名乗ることが可能となりました」と言っていることからキチンと国税庁の告示を理解していないことが丸わかりである。あれは精米歩合の要件が撤廃されただけで、原料米の等級や麹米の使用割合についての制約がしっかり存在している。ともかく、この方の「特定名称酒」に対する意見は、これが清酒を「難しいもの」にしているということである。

この意見、別にこの方のオリジナルな意見とは言えず、よく指摘されることであると思う。私自身も「特定名称酒」の基準は、よく言えば歴史の流れによる結果、悪く言えば妥協の産物、という認識を持っている。決して呑み手側にとってわかりやすいものとはなっていない。しかし、本当にこれが清酒を難しいものとし、消費を減退させる原因となっているといえるだろうか、私の意見は否である。そのことはワインを例にとればわかりやすい。

本記事二段落目で触れたように、ワインのソムリエ向きな本を手にとる人を見かけることが多い。それに、本屋のディスプレイもスペースや平積み率もワイン関連が圧倒的に多いことは一目瞭然である。ワインに興味を持ち、本を求める人がそれだけ多いと言うことの証左であろう。では、ワインが清酒に比べて圧倒的に平易に全てを理解しうるか、というのはもはや愚問であろう。以前に『Dr.Inkerの普通の人のための、普通のワイン読本』という本を紹介したことがあるが、ちょっとしたキモさえ押さえれば単純にワインを楽しむのにはなんら難しいことはない。それは清酒も同様である。そこから深みに入っていこうというのなら、細かな知識が求められる、先人の経験・意見を解していく必要がある、ということであろう。清酒の場合にはそこに「特定名称酒」が含まれるものと思われる。

清酒の「特定名称酒」、吟醸酒にしろ、本醸造酒にしろ、字面だけではよくわからない、という問題を提起される場合もある。ではワインの場合はわかりやすいのだろうか、フランスの場合を例にして比べてみる。フランスでのワインの分類は、ヴァン・ド・タブルとヴァン・ド・ペイ、そして上質指定ワインVDQSに原産地統制名称ワインAOCが大まかなところであろう。後者側は原産地が厳格に定められていく。さて、これらはラベルに明記されることになるが、これをパッと聞いて(見て)、予備知識無しにその指す内容を理解することが出来る人がいるだろうか? 例えばヴァン・ド・タブル、直訳すればテーブルのワインである。いきなり言われてわかるわけがない(机上でワインは出来ませんわね)。これは産地は関係なしにブレンド、場合によっては海外輸入のワインをブレンドしたものが該当するので、扱い的には清酒での「普通酒」に近いだろう。そこから地域の限定が進むごとに扱いが変わっていく。ちなみにペイ(pays)は「地方の」といった意味で、要するに地ワインである。日本人にとって、わかりやすさや字面での理解しやすさは「特定名称酒」とどっこいどっこいと思える。

もっと適例を示すと、フランスでのれっきとしたアル添ワイン(まぁ一般的な呼び方にすると酒精強化ワイン)はヴァン・ド・ナチュレ。。。

アル添してヴァン・ド・ナチュレ(直訳で「自然のワイン」)でっせ!!

意味する所は、アル添することで発酵を途中で止め、葡萄の持つ糖分を残して甘口にする、天然の甘味を残すことに由来する(甘味を残すため、と言う点で清酒の場合とはまた違う目的でアル添されることは実に興味深いところである)。名称に“自然の”とついているのにアル添していることに違和感を感じる方が多いかもしれないが、それで通っている。現地でどういう扱いかは定かではないが(リキュール・ワインに該当するとは思えるが)、ヴァン・ド・ナチュレは全てAOCワインらしい。清酒の場合の、アル添だが「本醸造」という名称が用いられているのと妙に共通するところを感じる。

つまり、ワインが一定の人気を獲得し、消費が行われているのならば、清酒の人気・消費低迷の要因(たとえ多くの中の一つの要因という扱いとしても)として「特定名称酒」のわかりにくさを挙げるのは全く持って的外れである、と言わざるを得ない。むしろ、戦後から1970年頃にかけての、級別制度全盛で「純米」の名称すらなかった頃、無糖添加を選ぶのすら困難であった頃に比べれば、清酒をとりまく環境は遙かに便利で居心地の良いものである。「清酒がヤヤコシイ」や「よくわからない」と言われる場合、まず「清酒」に対して自分の中で壁(偏見)を作っているだけに過ぎないのではないだろうか。ヤヤコシイや理解しにくい障壁は、自身の知りたいという情熱によって簡単に乗り越えられるということ、ワインに興味を持ち、関連本に手を出している方が実証しているのではないだろうか。


<追記>
太鼓持さんとのコメントのやりとりの中で、工程上での清酒のアル添のタイミング(醪へ添加する)の一般認識に関して疑問が沸いてきて、ふとネットを見ていたのだが、なんだか合成清酒のイメージからか、清酒でのアル添酒は単純に清酒(純米酒)と醸造アルコールを混ぜたものという認識がされてしまっていることもある様子。

特に驚いたのは、学歴上も立派で酒業界にも居たというワインアドバイザーの肩書きを持つ方のサイト、単にサイト上で公開しているだけでなく、そもそもは(どういう規模かは知りませんが)まかりなりにも学会誌に掲載した内容であるというのだが、読んで呆れてしまった。
http://www.kit.hi-ho.ne.jp/bknk/sake.html
このような記述では、アル添も三増も後から清酒に混ぜ合わして造られるもの、と受け止められかねない内容である。マッタク。その辺の適当な(失礼)日本酒紹介本でも簡単な工程図で記載されていると思うが、醸造アルコールにしても糖類にしても、醪に添加されるのであって、清酒に混ぜる訳ではない。そのことを解していれば、とてもではないがこのような記述は出来ないだろう。
また、ワインへのアル添に関して言及しているが、ヴァン・ド・ナチュレやポート・ワインといった世界のアル添ワインが触れられていない。ワインアドバイザーなのにねぇ。。。
スポンサーサイト


コメント
この記事へのコメント
ちょいとチャチャ入れ
本論ではない末梢部分で甚だ恐縮ですが、
清酒もアル添するのは、
発酵を途中で止めるのが主たる目的だと存じます。
その意味では、「ヴァン・ド・ナチュレ」のワインと同じかと。

もっとも清酒の場合は醪の発酵を止めて、
どちらかというと「軽快さを出す」ためであって、
「天然の甘味を残す」ヴァン・ド・ナチュレとは異なっております。
そこを指して「清酒の場合とはまた違う目的でアル添される」
とご指摘なのであればその通りであり、申し訳ございません。

いずれにせよ、貴論、全体として面白く拝見し、
実に「こねくろさんらしい!」との心証を抱いたものであります。
2009/02/18(水) 15:41:54 | URL | 太鼓持 #LbmlDI2w[ 編集]
太鼓持さん、コメント多謝です。

細々と書かなかったのでアレですが
(ちょっと本文修正しました)、
清酒の場合と違うの意味するところは
風味に関する目的の方です。ご指摘の
点にも一理あるかと存じますが、酒造上の
ある工程が行われる目的は最終的に「ど
のような風味・酒質に仕上げるか」という
ことに集約されると考えますもので(^^ゞ

入れるタイミングもほぼ同様、でもそれに
よって得られる効果(期待される効果)が
異なるという点に、一つの技法としての
アル添の面白さがあるようにも感じており
ますね。まぁアル添に関しての話題(柱焼
酎を含む)は改めてまとめたいと考えており
ますもので、今回はその辺の言及はアッサリ
ですわ。
2009/02/18(水) 16:57:06 | URL | こねくろ #RuqWbrxY[ 編集]
了解です。
2009/02/19(木) 07:50:00 | URL | 太鼓持 #LbmlDI2w[ 編集]
太鼓持さん、ちょいと追記しましたが、
アル添は純米酒にアルコールを混ぜると
出来ると捉えかねない記述をされている
方もいて、正直驚きました。

全員がそうだとは言いませんが、ワイン
アドバイザーとか○き酒師とかの肩書き
を持っているのに滑稽珍妙な解説をして
いる場合がネット上で目につきます。
2009/02/19(木) 10:36:59 | URL | こねくろ #RuqWbrxY[ 編集]
こねくろさん、こちらのブログへの書き込みは初めてです。
日本酒への関心がそれだけないんでしょうね。
ワインはまずフランス語やドイツ語などの壁があります。
でも、壁とは感じない?
おいしい日本酒に出会う機会が少ないのかも?
本物の日本酒と似非日本酒がはっきりわかる表示規定をしっかり作って欲しいです。
2009/02/21(土) 14:30:23 | URL | sakekadoya #-[ 編集]
sakekadoyaさん、ご無沙汰しております。
表示規定、今回扱った「特定名称酒」に関しては
細かな点での改善は必要とは思いますが、本文で
一昔前と対比して触れましたように、現状でも特に
問題はないと思っています。

「本物」か「似非」か、というのは非常に定義が困難
ですし、その線引きを行うのには賛同しかねますが、
日本酒とのファースト・コンタクトの場にしばしばなる
飲食店でのメニュー等での表示規定は必要かと。

飲食店でのメニューで「日本酒 熱燗 大(小)」と
いった形で銘柄もスペックも併記せず(大抵は
清酒でも極端に安い商品、あるいは合成清酒の
カテゴリーに属するものが使用されていると思い
ますが)での提供の仕方(飲食業界の悪習ですね)
に関しては規制するべきであるとは思います。
流石に「合成清酒(三増の比率では今やこちらに
なりましたし)」まで「日本酒」として扱われるの
には違和感があります。「清酒(普通酒)」である
としても、銘柄および原料を示すのはやむを得ない
かとは思います。
2009/02/21(土) 17:15:46 | URL | こねくろ #RuqWbrxY[ 編集]
コメントを投稿する
URL:
Comment:
Pass:
秘密: 管理者にだけ表示を許可する
 
トラックバック
この記事のトラックバックURL
この記事へのトラックバック
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。